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『秀句十勝抄』
(★1342㌻)
総じて之を言へば具足成就の第五の悪字なり。是方便善巧智円満の義なり。即ち阿字は是菩提心の義なることを讃ずるなり。頌に曰く、八葉の白蓮、一肘の間に阿字素光の色を炳現す。禅智倶に金剛縛に入って如来寂静の智を召入す。五相成身云云。一には通達心、二には菩提心、三には金剛心、四には金剛身、五には無上菩提を証して金剛堅固の身を獲るなり。然も此の五相具に備はれば方に本尊の身と成るなり」と。「大毘廬遮那経に云はく、是くの如く真実心の故に仏宣説したまふ所なり」と。又云はく「妙道を欲求し、次第を修持して、凡より仏位に入る者なり。即ち此の三摩地とは」と。又云はく「大毘廬遮那経に云はく、悉地は心より生ず。金剛頂瑜伽経に説くが如し。一切義成就菩薩」と。又云はく「故に大毘廬遮那経供養次第法に云はく、若し勢力無くんば」と。又云はく「菩提心を讃して曰く、若し人仏慧を求めて菩提心に通達せば父母所生の身をもって速やかに大覚位を証す」と。二教論弘法大師作下に云はく「菩提心論に云はく、諸仏菩薩昔因地に在って是の心を発こし已はって勝義・行願・三摩地を戒と為し、乃し成仏に至るまで、時として暫くも忘るゝこと無し。惟真言の法の中にのみ即身成仏するが故に是三摩地の法を説く。諸経の中に於て欠きて書せずと。喩して曰く、此の論は竜樹大聖の所造の千部の論の中の密蔵肝心の論なり。是の故に顕密二教の差別浅深及び成仏の遅速勝劣皆此の中に説けり。謂はく、諸教とは他受用身及び変化身等の所説の法、諸の顕教なり。是説三摩地法とは自性法身所説の秘密真言の三摩地門是なり。謂ゆる金剛頂の十万頌の経等是なり」と。菩提心義五大院の抄の一に「問ふ、此の二文一は菩提心義、二は菩提心論なり是誰が説くや。答ふ、真言の目録には並びに不空と云ふ。私に二文を検ふるに論は是竜樹の造、不空の訳なり。菩提心義は造主の名無し。而るに古徳皆不空の造と云へるは疑ひ有るなり○問ふ、若し爾らば菩提心論に亦云はく、毘廬遮那経の疏に准じて阿字を釈するに具に五義あり文。豈不空の一行の記を引けるに非ずや。答ふ、彼は是後人、彼の疏の文を引いて論の中に註入せしなり。
平成新編御書 ―1342㌻―
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