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『秀句十勝抄』


(★1343㌻)
 而るに有る論の本に長行に書けるは写生の悞りならん。問ふ、抑大日の疏に所引の文無きなり。何ぞ疏に准ずと言ふや。答ふ、高野の十四と二十の巻には此の文を脱せり。慈覚大師・遍明和尚・円成和上・円覚僧正等の本には並びに此の文あり。故に知んぬ、高野の抄本には脱去せるを。問ふ、菩提心義の末に古徳の註あり。云はく、高野の大僧正の進官入唐学法の目録の中に云はく、不空の訳なりと。今謂へらく、恐らくは是彼の不空の集なるのみ文。此の語を用ふるや否や。答ふ、縦令不空の集なりとも秘蔵の文をば集むべし。何が故ぞ唯顕教の経論のみを集むるや。故に用ひ難し。問ふ、若し終に疑ひあらば彼の五門を用ひざるや。答ふ、真言の古徳、目を閉ぢて信用す。今須く古に違はずして且く彼の文の五門を用ふると言ふ○問ふ、古徳の有るが云はく、有る目録に云く、菩提心論は不空の集なり、故に竜樹の説に非ずと。此の語用ふるや否や。答ふ、論に云はく、竜猛菩薩の造、不空詔を奉りて訳すと。而るに不空の集と言へるは憑無く用ひし」と。
     多宝分身付嘱勝九
  謹んで法華経の見宝塔品を案ずるに云はく「爾の時に多宝仏、宝塔の中に於て半座を分かちて、釈迦牟尼仏に与へて、而も是の言を作さく○大音声を以て普く四衆に告げたまはく、誰か能く此の娑婆国土に於て、広く妙法華経を説かん。今正しく是時なり。如来久しからずして当に涅槃に入るべし。仏此の妙法華経を以て付嘱して在ること有らしめんと欲す」已上経文。当に知るべし、過去の多宝・現在の釈尊同じく塔中に坐し、十方現在の釈迦の分身各八方に坐し、大会の四衆皆虚空に在って妙法華経付嘱有在といふことを。他宗所依の経には都て此の付嘱無し。天台法華宗のみ具に此の付嘱有り。是の故に天親菩薩の釈論の下巻に云はく「多宝如来の塔は一切仏土の清浄なることを示現すとは」○其れ権大乗経は彼権の一乗経なれば都て此の付嘱無し、未顕真実なるが故に。今の実大乗経は具に此の付嘱有り、已顕真実なるが故に。他宗の経の付嘱は法華宗に如かず○又六難を挙げて重ねて九易を示す。
 

平成新編御書 ―1343㌻―

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