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『曾谷殿御返事』
(★1382㌻)
一切衆生又食するによりて寿命を持つ。食に多数あり。土を食し、水を食し、火を食し、風を食する衆生もあり。求羅と申す虫は風を食す。うぐろもちと申す虫は土を食す。人の皮肉骨髄等を食する鬼神もあり、尿糞等を食する鬼神もあり、寿命を食する鬼神もあり、声を食する鬼神もあり、石を食するいを、くろがねを食するばくもあり。地神・天神・竜神・日月・帝釈・大梵王・二乗・菩薩・仏は仏法をなめて身とし魂とし給ふ。例せば乃往過去に輪陀王と申す大王ましましき。一閻浮提の主なり、賢王なり。此の王はなに物をか供御とし給ふと申せば、白馬の鳴く声をきこしめして身も生長し、身心も安穏にしてよをたもち給ふ。れいせば蝦蟆と申す虫の母のなく声を聞きて生長するがごとし。秋のはぎのしかの鳴くに華のさくがごとし。象牙草のいかづちの声にはらみ、柘榴の石にあふてさかうるがごとし。されば此の王、白馬ををほくあつめてかはせ給ふ。又此の白馬は白鳥をみてなく馬なれば、をほくの白鳥をあつめ給ひしかば、我が身の安穏なるのみならず、百官万乗もさかへ、天下も風雨時にしたがひ、他国もかうべをかたぶけて、すねんすごし給ふに、まつり事のさをいにやはむべりけん、又宿業によって果報や尽きにけん、千万の白鳥一時にうせしかば、又無量の白馬もなく事やみぬ。大王は白馬の声をきかざりしゆへに、華のしぼめるがごとく、月のしょくするがごとく、御身の色かはり力よはく、六根もうもうとして、ぼれたるがごとくありしかば、きさきももうもうしくならせ給ひ、百官万乗もいかんがせんとなげき、天もくもり、地もふるひ、大風かんぱちし、けかち・やくびゃうに人の死する事、肉はつか、骨はかはらとみへしかば、他国よりもをそひ来たれり。此の時大王いかんがせんとなげき給ひしほどに、せんずる所は仏神にいのるにはしくべからず。此の国にもとより外道をほく、国々をふさげり。又仏法という物ををほくあがめをきて国の大事とす。いづれにてもあれ、白鳥をいだして白馬をなかせん法をあがむべし。まづ外道の法にをほせつけて数日をこなはせけれども、白鳥一疋もいでこず、白馬もなく事なし。
平成新編御書 ―1382㌻―
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