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『法華本門宗血脈相承事』


(★1684㌻)前
 伝教等の秘し給へる正義、生死一大事の秘法を書き顕はし奉る事は、且つは恐れ有り且つは憚り有り。広宣流布の日、公亭に於て応に之を披覧し奉るべし。会通を加ふる事は且つは広宣流布の為、且つは未代浅学の為なり。又天台・伝教の釈等も予が真実の本意に非ざれども、未来嬰児の弟子等、彼を本懐かと思ふべき者か。去る文永免許の日、爾前迹門の謗法を対治し、本門の正義を立てらるれば、不日に豊年ならむと申せしかば、聞く人毎に舌を振るひ耳を塞ぐ。其の時方人一人も無く、唯我日蓮と与我日興計りなり。
  問うて云はく、寿量品文底大事と云ふ秘法如何。答へて云はく、唯密の正法なり。秘すべし秘すべし。一代応仏のいきをひかえたる方は、理の上の法相なれば、一部共に理の一念三千、迹の上の本門寿量ぞと得意せしむる事を、脱益の文の上と申すなり。文底とは久遠実成の名字の妙法を余行にわたさず、直達正観・事行の一念三千の南無妙法蓮華経是なり。権実は理今日の本迹の理なり、本迹は事久遠本迹の事なり。又権実は智に約し教に約す一代応仏の本迹。 本迹は久遠の本迹身に約し名字の身位に約す名字即の位。 又雖脱在現具騰本種と云へり。釈尊久遠名字即の位の御身の修行を、末法今時の日蓮が名字即の身に移せり。「理は造作に非ざる故に天真と曰ふ。証智円明の故に独朗と云ふ」の行儀、本門立行の血脈之を注す。秘すべし秘すべし。
    又日文字の口伝、産湯の口決の二箇は両大師の玄旨にあつ。本尊七箇の口伝は、七面の決に之を表す。教化弘経の七箇の伝は弘通者の大要なり。又此の血脈並びに本尊の大事は日蓮嫡々座主伝法の書、塔中相承の稟承唯授一人の血脈なり。相構へ相構へ、秘すべし伝ふべし。
  法華本門宗血脈相承事
   弘安五年太歳壬午十月十一日             日蓮花押    
 

平成新編御書 ―1684㌻―

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