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『法華本門宗血脈相承事』


(★1693㌻)
 玄の七に云はく「権実は智に約し教に約す」と。化他不定の時、施す所の権実八教なり。「両処殊ならず」と。久遠の本と今日の脱益と両処なり。
 籖の七に云はく「理に浅深無し故に殊ならずと曰ふ」と。本因本果の理を、今日・中間にも寿量顕本の理に推し入れて顕はすと釈するなり。
 籖の七に云はく「経に約すれば是本門と雖も、既に是今世迹中の本を名づけて本門と為す。故に知んぬ、今日は正しく迹中の利益に当たる。乃至本成已後倶に中間と名づく、中間本を顕はすに利益を得る者尚迹の益を成ず。況んや復今日をや」文。意は久遠本果の迹を中間・今日の本と為す。又久遠名字の妙法の影を中間・今日に垂迹する故に、下種に対して脱益寿量を迹と得たる証拠に釈する是なり。
 疏の一に云はく「衆生久遠に仏の善巧を蒙る」と。久遠は下種、霊山は得脱。
 籖の十に云はく「故に知んぬ、今日の逗会は昔の成就の機に赴く」と。霊山下種、久遠得脱の益。
 記の二に云はく「本時の自行は唯円と合す」と。本時とは本因妙の時なり。「化他は不定、亦八教有り」と。中間、今日化導の儀式なり。
 玄の七に云はく「迹の本は本に非ず」と。今日本果妙の事なり。「本の迹は迹に非ず」と。本因妙の事なり。「本迹殊なりと雖も不思議一」と。本因妙の外全く迹無きなり。迹門は即ち顕本の後は本無今有の方便無得道なりと。中島の証俊に何と問われし時、俊範法印答へて云はく、不思議一と。求めて云はく、其の義如何。答へて云はく、文は迹門に在り義は本門に在り云云。会して云はく、迹門既に益無し、本門は益有り。本迹勝劣不思議一云云。
 妙楽云はく「権実は理なり、本迹は事なり」と。天台云はく「本迹を二経と為す」と。如来の本迹は理の上の法相なり、日蓮の本迹は事行の法相なり。
  以上脱の上の本迹勝劣の口決畢んぬ。
 

平成新編御書 ―1693㌻―

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