平成29年7月

当坊本堂へ連れてこられた夫婦とした話

ようこそ大石寺へ。
いまお題目三唱をした御本尊様を良くご覧なさい。日蓮正宗の御本尊様は写真に撮ってはいけないので本や写真で見ることは出来ないのです。
大石寺にはこれだけ沢山の坊がありますが御本尊様を拝せるのは開いている坊だけなんです。御影堂だってお厨子が閉まっていて御本尊様は見ることが出来ません。
だから今眼前に日蓮正宗の御本尊を拝しているのはとても貴重なことなんですよ。
あなたは何か信仰をしていますか？
え？日蓮宗、ふんふん。それはイケません。日蓮大聖人の教えの一切はこの大石寺を開かれた日興上人に伝えられたのであって、身延山久遠寺には何にも残っていないのです。
このプリントを見て下さい、日蓮宗では御本尊が決まっていないんですよ。自分でそう認めてる
あり得ますか？信仰の対象が決まっていない宗教なんて！
お坊さんは信徒に信心をさせようとするんですよ、でも何を信じさせるかが決まっていないなんてどう考えてもおかしいでしょう？
「いや、日本はそういう国だから。 八百万（やおよろず）の神っつてね、何でも良いんじゃないですか、自分が好きで気に入った物を信ずれば。むしろ日蓮正宗のように堅苦しくこれでなきゃダメなんだ、なんて言ってたら私はやりたくないですね」
「それはおかしいですよ。宗教はどこまで行っても正しいか間違ってるか、なんです。自分が良いと思った物がすべて正しいものになる訳じゃないでしょ？
例えば日本で一番の山は富士山です。でもそれを知らない人が北アルプスこそが日本で一番高い山だ、と言い張ったとしても富士山が日本一の山であることは揺るがないのです。
自分が好きな物を選べば良いんだ、と言いますがね、例えばこの薬は甘いから、これを飲むんだ、この薬が自分の病気には効くに違いないんだ、と自分勝手に医者の指示も制止禁止も聞かずに飲んだら治る者も治りませんよ。」
「いや、病は気からというし、ニセ薬効果って言うのがあってね、そうとも限らんのです」
「いや、絶対あなたの考えはおかしいです。自分が好きな宗教を選べば良いんだというなら、あのオウム真理教やイスラムテロ集団なんかどうですか、あれだって宗教ですよ！
自分がこれを好きだからこれをやるんだ、っていう理屈が通るならテロ活動だって無差別殺人だってあなたは許せるんですか？　それで良いんですか？」
「いや、それは極端ですよ。社会的に間違ってるのはやっぱり間違ってるでしょう」
「違います、仏法では社会的に間違ってるかどうかじゃなくて、お経に照らして間違ってないか、正しいかどうかが大事なんですよ。社会だって曲がりますよ。戦争に突入するのだってそれを容認する社会があるからじゃないですか。その社会を構成している一人一人を誠実で正しい人に変革するのが仏法なんです。」
「うーん、なんだか難しくなってきたナ。時間もないから失礼します」
「もう一度言います、好き嫌いで判断して良いものと悪いものがあるんです！着る服ならいくらでも自分の好きな奴を選べばよいでしょう。でも薬とか、自分が精根かけて信ずる宗教は気に入ったとか馬が合うというだけで選んではいけません。不幸になりますよ、早死にしますよ」
「はいはい。蓼食う虫も好き好き、早死にでイイじゃないですか自分で選んだ結果だもの」
「なんと愚かしい、これも日蓮宗の謗法の毒気にやられてるんですよ。このプリントをその日蓮宗の坊さんへ見せて大石寺の坊さんがこんなこと言ってたがどういう事なんだ！と問い詰めてみて下さい。きっと答えに窮すると思いますよ」
「はいはい、どうも御邪魔しました、失礼します！」

半ば憮然として帰られたが、どうしてこうもいい加減で居られるのだろう。自分はそれで良いかもしれないがそんな邪法で供養される御先祖様はさぞや恨めしく思っていることだろう。
そして子孫も。「これからイスラム国へいって来ます」などという子が居たら「おまえの自由だからどうぞ行ってらっしゃい」と送り出すのだろうか？　絶対におかしい。
大聖人が、
此の法華経は知らずして習ひ談ずる物は但爾前経の利益なり。 (一代聖教大意９８)
日興上人が
なをなをこのほうもんは、しでしをたヾしてほとけになり候。しでしだにもちがい候へば、おなじほくゑをたもちまいらせて候へども、むげんぢごくにおち候也。（歴代法主全書１－１８２）
と仰せられたのも、自分勝手な信心じゃいくらお題目をあげてもダメなんだ、という御示しだろう。