どんなことがあっても

 涅槃経に云はく「譬へば貧女の如し。居家救護の者有ること無く、加ふるに復、病苦飢渇に逼められて遊行乞丐す。他の客舎に止まり一子を寄生す。是の客舎の主、駆逐して去らしむ。其の産して未だ久しからず、是の児を携抱して他国に至らんと欲し、其の中路に於て、悪風雨に遇って寒苦並び至り、多く蚊虻・蜂螫・毒虫の吸い食らふ所となる。恒河に径由し児を抱いて渡る。其の水漂疾なれども而も放ち捨てず。是に於て母子遂に共倶に没しぬ。是くの如き女人、慈念の功徳、命終の後、梵天に生ず。文殊師利、若し善男子有って正法を護らんと欲せば○彼の貧女の恒河に在って、子を愛念するが為に、身命を捨つるが如くせよ。善男子、護法の菩薩も亦、応に是くの如くなるべし。寧ろ身命を捨てよ○是くの如きの人、解脱を求めずと雖も、解脱自づから至ること、彼の貧女の梵天を求めざれども、梵天に自ら至るが如し」(開目抄573頁)

むかしむかし、ある所に貧しい生活をしている女の人が居ました。住む家もなく、お金を貸してくれる人もいず、その上病気がちでいつもお腹をすかせて、あちこちをさすらい歩いていました。
ある時、アパートを借りていたところ、この女の人は赤ちゃんを身ごもり、そして赤ちゃんが生まれました。
するとその宿の主人は「もう出てって下さい」といって女の人と赤ちゃんを宿から追い出しました。
赤ちゃんを産んだばかりのお母さんとなったその女の人は、その赤ちゃんを抱いて、どこか別の国へ移り住もうと歩き始めました。
ところがその道すがら、大雨に降られたり、大風に飛ばされそうになったり、寒さに凍え、その上蚊や虻、蜂とかに刺されて散々な目に遭いました。
やがて大きな河にさしかかりましたが、これを渡る舟もありません。お母さんは仕方無く赤ちゃんを抱いたままその河を泳いで渡ろうとしました。ところがその河は流れが大変はやく、お母さんは溺れそうになりましたが、必死で赤ちゃんを助けようと頑張りました。けれどついに力尽きてお母さんも赤ちゃんも一緒に濁流に飲み込まれて溺れ死んでしまいました。
この話を聞いて皆さんはどう思いましたか?
この赤ちゃんが居なければ、宿屋から追い出されることもなかったでしょうし、道中、大変な思いをしても自分一人ならなんとでもなったでしょう。そして、河を渡るにしても、自分一人だけだったら助かったかも知れません。けれどこのお母さんは可愛い赤ちゃんを決して手放すようなことはしなかったのです。そして、このように自分の可愛い赤ちゃんを最後まで守ろうとしたこの女の人は、死んだ後、その功徳によって神様の住む世界に生まれ変わったということです。

皆さんもお父さん、お母さんから叱られて、嫌いになったことがあるでしょう?けれど、お父さんお母さんはあなたのことが大好きなのです。あなたのことが憎くて叱っているんじゃないんです。もし本当にあなたのことが憎くて嫌いなら、あなたをどこかに置いてきぼりにして捨ててしまうことだって出来たでしょう。でも、そうじゃないでしょう?そこに皆さんは「ありがたい」ということを感じなければいけません。お父さんお母さんはいつだってあなた方を立派な人間になって欲しいと思っているのです。叱るのもあなたが立派な人間になって欲しいからこそ、なんです。

さて、このお母さんは立派でしたね。このお母さんが赤ちゃんを決して手放さなかったように、私たちも大聖人様の教えを「たとえどんなことがあっても」決して捨てるようなことがあってはいけません。命がけでこの信心を貫いていく所に、自然と自分が仏様の心根に近づいていくようになるのです。
例えばこのお母さんは神様の住む世界に生まれ変わりたい、なんて一度も思いませんでしたが、最期は溺れ死んでしまったけれど、可愛い赤ちゃんを守りたい一心で片時も手放さなかった、という功徳によって思いの外に、神様の住む世界に生まれ変わる、という果報をうけたのです。
ですから、どんなことがあっても大聖人様の教え――、猊下様と大御本尊様を信じること――を捨ててはいけませんよ。そうすればきっと即身成仏といって仏様と同じ心根となって、仏様の世界に住むことが出来るようになるのです。
このお話の女の人は死んでから生まれ変わって神様の国に住むようになりましたが、私たちは仏様の世界に生まれ変わることなくこの体そのままで住むことが出来るのです。それは娑婆即寂光といって、仏様の世界はどこか遠い所にあるのではなく、この皆さんが住んでいるおうちや、学校のあるこの世界がそのまま仏様の世界として光り輝くのです。それは世界が変わるんじゃなくて、皆さんが仏様になるからそれに従って自然と皆さんの住んでいる所が仏様の世界となっていくのです。
だから、一生懸命ナムナムしていくと、何も怖いことはありません。ガミガミ怒るお父さんお母さんも優しくなるし、いじめっ子も自然と居なくなります。勉強やスポーツも良くできるようになるし、良いお友達も増え、悪いお友達は居なくなります。
「どんなことがあっても」ナムナムを嫌いになってはいけませんよ、というお話でした。

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