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地神

日蓮大聖人は「不孝の者をば日月も光ををしみ、地神も瞋りをなすと見へて候」と仰せられて、こんなお話を紹介されています。

あるお経に書いてある事なんですが、
大勢の弟子信徒はおろか、諸々の神様や人ならざる様々な者達がお釈迦様を囲んで集まっていたとき、お釈迦様が一人一人の身の上を尋ねていました。

地神と話したとき、仏様が、
「おまえさんは地を支えているのけど、大地よりも重い物はあるかね?」
と尋ねました。地神が敬ってお答えするには、
「はい、実は大地よりも重い物があるのです」
「ややや、それはまたおかしな事だな、この世の一切は大地の上に立っている、世界一高い須弥山だって、大海だって、地の上にあるというのに、その大地を担いでいるお前さんにして、大地よりも重い物があるというのはどういう事や」
「お釈迦様は人が悪い。十分分かっていながら、他の人に分からせようとしてこういう質問をなさるんですね。ようござんす。それならお答えしましょう。私が先代の地神からお役目を受け継いでから二十九劫になりますがね、その間この世の一切の物を載せた大地を支えてきました。首も腰も痛いなんてことはこれっぽっちもありません。余裕です。何なら大地を持ったまま走り回ることだって出来ますよ。

でもね、親不孝の奴が居るところはどうにも重いんですよ。首が痛く、腰に来ますよ。膝はガクガクしますし、足も動かせません、もうね、目がクラクラしてぶっ倒れそうですよ。こんな不孝者のいる所は今すぐうち捨ててしまいたくなる衝動にいつも駆られていますよ。まぁそういうことで不孝者がいる所はいつも地震が起こっちゃって居るような次第なんですよ。だからね、お釈迦様の従兄弟の、提婆ナンチャラという人が居たでしょ、あの人は王族出身の御出家だったけど、まー不孝者でしたよ。私ゃもう辛抱堪らんと思って手を外したものだから、大地が裂けて無間地獄に落ちて行っちまいましたよ。すみませんね。力及ばずで」
というように地神は民衆の面前でこまごまとお釈迦様にお話を致しますと、お釈迦様も「そうだそうだ、うんうん」とうなずかれました。そして遠くを見つめて、「しかしなんだな、私が死んだあとに生まれてくる人々は、提婆達多よりよっぽど不孝な者達ばかりなんだよな」と嘆かれました
       (刑部左衛門尉女房御返事1503)

[説話]

最終更新時間:2021年03月11日 23時50分29秒